最近の活動から

『神奈川大学の本に執筆しました。』

小島周一 弁護士

朝日新聞記事イラスト:今井ヨージ 神奈川大学が、今年3月23日、神奈川大学入門テキストシリーズ「君たちに伝えたい 神奈川の裁判」という本を出版しました(株式会社御茶の水書房、定価本体900円)。

 この本は、これから法律を学ぼうとする法学部の大学生を主な対象として、神奈川県で裁判が行われた著名事件8つを紹介したものです。

 そのうちの一つに、1984年3月に横浜市旭区で発生し、妻を殺したという容疑で起訴された山下事件が取り上げられ、主任弁護人だった私が執筆しました。

 山下事件は、「解剖した医者が言ってるんだから殺しに間違いないんだ」「お前がやったんじゃなければ息子が犯人だな。息子を逮捕するぞ」という逮捕前の厳しい取り調べに、山下さんが嘘の自白をさせられた事件です。しかし山下さんは、最初の弁護人面会から無実を訴え、私たちは弁護団を結成して山下さんの冤罪を晴らすための裁判を続けました。その後、実に3年8ヶ月もの裁判を経て、妻が実は病死だったことが明らかになり、自白した犯行態様も部屋の状況から不可能なことなどがわかって、1987年11月、横浜地方裁判所は無罪判決を言い渡したのです。

 検察官は控訴せず、山下さんは晴れて逮捕時に働いていた会社に再就職しました。

 しかし、失われた3年8ヶ月は無罪判決が出たからといって戻っては来ません。冤罪は、それを晴らすことも大変ですが、一度冤罪事件に巻き込まれてしまうと、たとえ冤罪を晴らしたとしても、それまでの期間や人間関係、仕事など多くのものを失い、さらには「本当はやってたんじゃないのか?」などという心ない噂や陰口に、その後も苦しめられるのです。

 法律を学ぶことを志す若者たちが、この本で、事件に巻き込まれたときの当事者の苦しみや、新聞・ニュースで報道されることの少ない実際の裁判の活動、弁護士の苦労とそれが実を結んだときの喜びを少しでも感じ取ってくれればと念じつつ書きました。機会があればお読みいただけると幸いです。

 なお、山下事件については、ジャーナリストの江川紹子さんが「冤罪の構図『やったのはお前だ』」という著作で紹介し(現代教養文庫/1994年)、また、作家の小杉健治さんがこの事件を題材にした法廷ミステリー「最終鑑定」という本を書いています(集英社文庫/1994年)。

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