リレーエッセイ(コラム)

第2回『高齢社会のひとつの横顔』

菊地哲也 弁護士

 内閣府で、「エイジレス・ライフ」、(引用すると、年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送ることだそうです)を紹介する取組みが行われています。
 ある程度ご高齢になっても、無心に何かに取り組まれている姿、何かに尽くされている姿には、人を惹きつけるものがあり、また、不思議と周りにいる人が勇気づけられたりするように思います。
 また、「エイジズム」という言葉がありますが、百科事典「マイペディア」によれば、「年齢を理由に個人や集団を不利に扱ったり差別すること」とあります。
 高齢者、という表現を用いた場合であっても、それぞれの方の生き方や生活はさまざまです。固定的なイメージを持つことは、本当のその人を観る眼もくもらせてしまうのでしょう。

 雇用の場でも、生活の場でも、いつまでも安心して過ごせる環境は大切です。
 ところで、高齢になってから、その人らしく生きることを脅かしてしまうもののひとつに、虐待の問題があります。
 ご承知の方も多いと思いますが、「高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援に関する法律」という法律があり、2006年4月1日から施行されています。
 名称が長いため、「高齢者虐待防止法」と呼ばれることもありますが、正式な名称のとおり、「養護者に対する支援」ということも支柱となっている法律です。
 多くのご家族や、或いは多くの事業者、職員さんが、悩みながらも、高齢者ご本人と真摯に向き合い続けていて、また、介護を抱えるご家族に過度の負荷がかかっているという問題もあります。
 ですので、これらの問題は、養護者の支援など社会制度上の問題も含めて、これから先どのような社会をかたちづくっていくかということに深く関わっています。
 厚生労働省では、この法律に基づく対応結果を公表しています。
 これによると、2009年度の調査結果について、「養介護施設従事者等」による虐待に関する相談・通報件数は、408件、「養護者」によるものが23,404件、虐待と判断された件数は、それぞれ、76件、15,615件とされています。
(「養介護施設従事者等」とは、養介護施設等の業務に従事する職員によるもので、「養護者」とは、高齢者を現に養護するもので、要介護施設従事者等以外のものです。)

 高齢者虐待のなかでも、介護殺人等、事件性の高いものなどについては、しばしば報道などでも目にするところかと思います。
 被害者となった高齢者の方、加害者となってしまった人、それまでの、それぞれの人生を考えると胸が痛くなります。
 法律では、高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見したときの、通報義務や通報努力規定が設けられています。また、同法によれば、施設や病院などの団体、養介護施設従事者や、医師、保健師、ほかに私たち弁護士なども、早期発見に努めるべきものとされています。
 虐待が未然に防止されるためにも早期発見は重要なことです。解決のための糸口に繋がって欲しいと願ってやみません。

 虐待防止法と関連する制度として、成年後見制度が掲げられています。
 ご高齢の一人暮らしの方が、経済的な被害を受けることなども依然多くあります。ご本人の生活に支障が出ないように配慮していく必要があるとき、成年後見制度の活用を考えられてみてもよいかもしれません。
 福祉関係者などによる支援とともに、こうした制度を活用することも、社会とのひとつの新しいつながり方です。
 誰もが利用できるようにするためには、成年後見利用支援事業の活用が拡大されていくような方向性も必要です。

 高齢者白書(2010年版)によれば、2008年のデータより、65歳以上の方のいる世帯について、「単独」・「夫婦のみ」世帯が過半数とされており、周知のとおり、こうした世帯が増加傾向にあります。
 ご夫婦でも、どちらかが介護を要する状態であれば、いわゆる、老老介護が行われているということになります。
 社会とのつながりを持たないということ、家族のある人、家族のいない人、それぞれのつながりが薄れているいま、安心や安全ということを、どのように求めたらよいでしょうか。

 それぞれの人が、それぞれの地域に温かな目を向けられていること、ちょっとしたことですが、何かが変わるということもあるかもしれませんね。

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