新聞・雑誌に取り上げられました!

『全面的な国選付添人制度の実現を目指して 子どもたちにも弁護士を !!』

金子祐子 弁護士

 20歳未満の子どもについて、(1)14歳から20歳未満の子どもについては刑罰法令を犯したと疑われた場合、(2)14歳に満たない子どもについては刑罰法令に触れる行為をしたと疑われた場合、(3)全ての子どもについて将来刑罰法令に触れる行為をするおそれがある場合は、その事件は全て家庭裁判所へ送致されることとなります。家庭裁判所送致事件のうち、約20%の事件で観護措置決定がなされ、約20%の少年が少年鑑別所に収容されます(2009年度司法統計。以下同じ)。
 少年鑑別所は、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づいて、少年の資質の鑑別を行います。具体的には、少年に対して知能検査や性格検査、面接、身体検査などを行ったり、少年の日常生活の様子、課題への取組みなどを観察して、少年の処遇指針の策定に役立てています。他方、家庭裁判所は、心理学、教育学、社会学その他専門知識を有する調査官が、面接調査、照会調査、環境調査、各種検査などを行います。
 このように、科学的な調査結果を踏まえ、家庭裁判所は少年に対する最終的な処遇を決定します。そんななか、弁護士付添人(付添人といいます)は本当に必要なのか、必要だとした場合、付添人の独自の役割は何なのか、当然疑問に思われることと思います。そこで、今回は40号に引き続き付添人の必要性をお伝えするとともに、これまでの取組みについても紹介します。

~付添人の必要性・役割~

 付添人の必要性と役割については様々な説がありますが、ここでは実務家として考えられる点をあげます。

(1) 少年をえん罪から守ること
 本当はやってもいないのに嘘の自白をし、結果として無実の罪で処罰される悲劇が成人でも後を絶たちません。このようなえん罪の危険は、少年にとって、成人以上に大きいといえます。少年は、成人に比べて精神的に未熟で、大人である取調官の誘導にのりやすく、また迎合的です。うその自白が記載された調書が成人以上に作成されやすい状況にあるのです。
 このように作成された調書は、家庭裁判所に事件が送致されると、全て裁判官が目を通します。成人の刑事手続きでは厳格な要件のもとでしか、裁判官は調書を読めませんが、少年手続においてはそのような要件がないため、捜査機関から送られてきた調書は、全て裁判官が目を通すことになります。つまり、嘘の自白が記載された調書を元に、少年の処遇が決まる危険が非常に高いのです。
 そこで、付添人は、少年から充分に事実関係や取調べ状況を確認し、えん罪ではないか、取調べに問題がなかったかをチェックしていきます。問題があった場合、付添人は、少年の立場から家庭裁判所に対し、「えん罪である。」と主張し、えん罪から守るために証拠調べを求めるなどの活動をしていきます。
 このように、少年の適正手続を保障し、少年をえん罪から守るために付添人は必要なのです。

(2) 少年の意見・考えを家庭裁判所に伝えること
 少年は、審判廷で自分の意見を伝えることができます。しかしながら、限られた時間内で、自分の意見や考えをまとめて他人に伝えることは、大人であっても非常に難しいことです。とりわけ、少年の中には、本人の特性や障害から自分の意見・考えをそもそもまとめることが難しい少年もいれば、虐待経験などから大人に対して恐怖を抱き、自分の意見・考えを大人に伝えられない少年もいます。加えて、審判は親切を旨として和やかに行われますが、処遇を言い渡される少年は極度の緊張状態で審判に臨んでいるのです。
 そのような少年のために、付添人は、審判に至るまで、時間をかけて少年の話を聴き、少年が事件に向き合い、二度と同じことを繰り返さないようにするためにはどうしたら良いかを少年と一緒に考え、少年が審判で自分の意見・考えを伝えられるように援助します。また、審判は限られた時間で行われることから、付添人は、少年が最も適切な処遇になるように、少年の立場から調査官や裁判官に意見を伝えていきます。
 このように、少年の意見・考えを適切に家庭裁判所に伝え、適切な処遇が選択されるために、付添人は必要なのです。

(3) 被害者の対応を行うこと
 被害者がいる場合、付添人は、被害者に対し、謝罪・示談を行います。被害者への示談等の対応は、処遇を決定する家庭裁判所で行えないのが実情です。
 もっとも、ただ被害者に対し、少年の謝罪の意思を伝え、金銭を支払うという訳ではありません。付添人は、少年に対し、謝罪文などを書かせたり、被害者の言葉を伝えることによって被害者の気持ちや事件を考えるよう促していきます。そのような付添人の働きかけを通じて、少年がだんだんと事件に向き合い、被害者への償いをどうしたらよいかと考えるようになることは少なくありません。
 このように、被害者の対応を行うと共に、それを通じて少年の考えを深めさせるために、付添人は必要なのです。

(4) 少年を取り巻く環境を調整すること
 少年が事件を起こす背景には、少年自身の問題だけでなく、少年を取り巻く環境的要因が起因していることも少なくありません。例えば、家族との仲がうまく行かずに逃げ場を求めて深夜無断外泊を繰り返す内に悪い仲間と仲良くなって事件を起こしてしまったり、学校になじめずに不登校となり携帯サイトにはまって居場所を求めて援助交際を行ったりと事件の背景には様々な環境的要因があります。このような環境的要因があると、少年がいくら立ち直ろうと思っていたとしても、なかなか非行から離れることはできません。
 そこで、付添人は、たとえ事件の主原因でなかったとしても、これらの要因を除去し環境を整え、立ち直ろうとする少年の援助をします。
 付添人は、少年の家族に対する不満・思いを聴き取って家族に伝えたり、逆に家族の少年に対する思いを少年に伝えたりして、少年と家族の関係修復に向けた活動をします。少年が身体拘束されている場合、家族の面会時間は非常に限られていることから、付添人の役割は非常に大きいといえます。
 少年が学校になじめていない場合は、付添人は、学校や保護者と話し合ってその原因をつきとめて対策を立てることで、少年が学校に戻れるようすることもあります。また、事件により退学処分されるおそれがある場合は、付添人は学校と協議し、学校に復帰できるよう働きかけることもあります。
 働いている少年に対しても同じことが言えます。付添人は、職場の協力が得られる場合、職場に継続雇用の申入れを行ったりしますし、学校にも行っておらず働いていない少年などの場合には、適切な職場を探したりもします。
 少年の元々の環境を整えれば少年の社会復帰につながる場合もありますが、中には、両親や面倒を見れる親戚がいなかったり、両親がいても虐待を受けていて、元の場所に帰れない少年も少なくありません。そのような場合、付添人は、関係機関に働きかけて、少年が安心して生活できる施設や住み込みの職場を探したりもします。
 このように、付添人は、非行の背景となる環境的要因を除去し、安定で適切な環境を整え、少年が社会復帰したときに備えます。安定で適切な環境下で規則正しい生活を送ることにより、少年はだんだんと落ち着き、非行から離れていくのです。

 これまで述べてきたように付添人の役割は実に多種多様です。中には、付添人にしかできない役割もあるなど、付添人の必要性は大きいと言えます。付添人は、少年の精神的未熟さばかりを強調して施設収容を回避するためだけに活動しているというイメージを持たれる方もいますが、決してそうではないのです。

~付添人選任率の低さと国選制度の不備~

 少年に付添人が必要であるにもかかわらず、実際の事件で付添人が選任されている率は極めて低い状況にあります。
  成人の刑事被告人にはほぼ100%弁護人が選任されているにもかかわらず、少年に付添人が選任されている率は11.3しかなく、少年院送致された少年に対する付添人選任率でさえ56.5%しかありません。鑑別所収容された少年に対する付添人選任率も47.9%と非常に低い状況です。
 自分の意見・考えを家族や裁判官にうまく伝えられず、環境調整がなされないまま処遇が決定されることは非常に憂慮すべき問題であり、せめて成人並みの法的援助を少年にも整える必要があります。

 もっとも、これらの付添人の費用は、ほとんどが日弁連の法律援助制度により賄われているのが現状です。少年の家庭には、弁護士費用を払えるだけの資力がない家庭が少なくなく、資力がある親であったとしても、親が虐待している場合などは弁護士費用の用立てを望むことができなかったりするからです。
 この法律援助制度は、弁護士が毎月積み立てた特別会費により運用されていますが、将来社会を担う子どもに対する費用は、弁護士会という一団体に任せるものではなく、国がその責務として行うべきではないでしょうか。

 現在、付添人費用を国費で賄う国選付添人制度は殺人などの重大犯罪事件のみであり、かつ、国選付添人をつけるかどうかは家庭裁判所の裁量に委ねられ、その範囲は非常に限られています。
 せめて、鑑別所に収容された少年全員に対し、国選付添人がつけられるよう、当委員会は、全国に先駆けて会長声明を出して政府に要求し、本年12月4日にシンポジウムを開催して市民に呼びかけるなど活動に取り組んでいます。
 今後も活動を継続し、早期に全身体拘束事件における国選付添人制度が実現するよう求めていきます。

【こどもの権利 42号より転載】

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