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働く人の法律相談『内々定で入社承諾書、後の就活は?』

佐藤正知 弁護士

労働契約の成立前、就活できる

 来春卒業見込みの大学生の就職活動が本格化しました。東日本大震災の影響でスタートが例年より2カ月遅れましたが、早いところでは内々定が出た人もいるでしょう。さて、内々定の段階で会社から入社承諾書を出すよう迫られたら、その後の就職活動はあきらめなければならないのでしょうか。

 雇用契約に関する判例をみると、正式内定ならば労働契約が成立したと認められます。しかし内々定は、正式内定にいたる前のため、労働契約が成立したと認めることは難しいです。

 新卒の就職活動では、何社も採用試験を受け、幸運にも複数の内定をもらったら、その中から一番働きたい企業を選ぶ人が多いでしょう。経団連の倫理憲章は正式内定を10月1日以降にするとしています。それまでに内々定を出したとしても、労働契約が成立したわけでもないのに、企業が就職活動の自由を制約することは、公序良俗に反し無効だと考えられます。

 それでは、本命の企業から内々定をもらった場合、他の企業の内々定を辞退することはどうでしょうか。

 入社承諾書を出していたからといって、内々定を辞退するのは自由です。民法の規定では、正式な労働契約を結んだ人でも、入社の2週間前に予告すれば辞退できます。まして、労働契約が成立する前の内々定の段階では、辞退しても違法とはいえないでしょう。

 逆に、企業が労働契約が成立していないからといって、不合理に内々定を取り消したら問題です。学生は内々定によって、正式内定への期待権が生じます。この場合、企業に損害賠償を請求できます。

 企業は事業の将来像を考えて採用活動をしています。優秀な学生を確保したいと内々定者を引き留める企業の心理もわかります。

 むしろトラブルになるのは、学生の断り方に原因がある場合も目立つようです。連絡をせず内々定を断ったり、辞退をメールで済ませたりするのは問題です。社会人としての第一歩を踏み出すためにも、誠意を持って対応することが大切です。

【朝日新聞 2012年1月23日付】

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